手によって成される療法

ファシアリリース

ファシアとは?

「筋膜、腱膜、骨膜、筋間中隔、支帯、被膜等の身体的構造基盤である線維性結合組織を指し、神経・血管の交通網でもある」

 

 難しいですが、最近耳にする「筋膜」とはファシアに含まれる一部で、主に筋肉を包んでいる膜のことになります。コラーゲンやエラスチン等の線維性タンパクとヒアルロン酸と結合した水の成分で構成される、とてもみずみずしくも強い膜です。全身は前述の通り「膜」のネットワークで連結されており、隙間という隙間にファシアという「膜」が存在します。したがって関節や筋肉、内臓の膜まで全てが関連していて、途切れている個所は存在しない相互依存の関係で身体の形を造り、機能を営んでいるといえましょう。

 

 ファシアには痛みを感知する侵害受容器というセンサーがたくさん含まれており、原因のよくわからない身体の痛みの原因ではないか?ということが解りつつあります。全身につながっているネットワークですので、一か所に制限がかかると他の遠く離れた組織にまで影響を及ぼす場合があります。そのため、痛みを訴える箇所だけではなく全身を評価する必要があります。ファシアリリースは主に手技操作によりやさしくゆっくりと行われるもので、古い制限や強い固着箇所は多少の痛みを生じる場合もありますが、多くの場合は心地よく、どのような年齢の方でも安心して施術を受けることができます。

 

 

 

身体のテンセグリティ構造

身体のネットワークは全てファシアで連結されているといいましたが、骨は固いもので、ファシアは弾性性能があります。実は身体はこの固いものと柔らかいものがお互いに引っ張り合い、張力の均衡を保ちながら相互依存の形で成り立っています。これをテンセグリティ構造といい、輪ゴムや木、ストローなどで模型を作ってみると画像のような形になります。近代建築でもこの手の構造はよく見られ、身近ではテントなどもこの構造で成り立っています。膜の張力があるからこそ支柱は立っていられるといえます。このように考えると「骨が身体を支えている」というのはおかしいなということになります。ちなみにこの構造の一箇所に圧をかけると全体が歪みます。これを考えてみると、一箇所への問題が全体に及ぶことがわかると思います。

グラストンテクニック

ファシアスリックテクニック

 2011年に川西陽三DCがIASTM(器具を使った筋膜へのアプローチ)としてグラストンテクニックをアメリカから紹介したのがきっかけになり、その後その他の器具を用いた方法も国内で一気に広まりました。当時は医療有資格者のみ講義を受けライセンスを取れましたが、幸いカイロプラクティックの学位を有していた私は真っ先に受講することができました。海外では理学療法士、作業療法士、アスレティックトレーナー、カイロプラクター等広く使用されており、病院のリハビリテーションルームにもツールが置いてあります。

 手では再現できない刺激や行き届かないところへのリリースができるのが特徴で、いまでは純日本製のツールであるスキャンドスリックプロを使用したファシアスリックテクニックとしてアップデートされ、より効果的にファシアへの施術をすることが可能になりました。

関節リリース

 「関節モビリゼーション」というほうが一般的です。ファシアリリースで説明した通り、関節の構成要素の軟部組織もすべて「ファシア」です。モビリゼーションもファシアリリースであると考えますので、私が勝手にこう言っているだけです(笑)よほど進行した関節変形はまた別ですが、関節の痛みを感じる侵害受容器はほぼ周辺の軟部組織にあります。痛みは大半が軟部組織由来のものです。    

 関節面を制限のレベルに応じて手技操作で微細に動かすことにより、関節の正常な動きを回復させたり、疼痛緩和に効果が期待できます。きわめて安全で効果的な手技として理学療法でも一般的に採用されています。

セルフリリース 運動療法

 身体は様々なストレスや加齢により日々酸化し、弾力が低下し痛みや体調不良の原因をつくることになります。

  特に同じ姿勢の連続での作業は負荷のかかりやすい腰や首などの組織の水分量を低下させ、粘度が高くなるいわゆるこり感や固さの感覚、亢進すれば痛みを生じさせます。日頃から定期的に自分の身体をセルフケアしておく必要があります。

 適切なエクササイズやツールを使ったセルフリリースなどをお教えします。まずは当方にある器具で試してみてください。

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